
ノーコードで業務の自動化を実現。「ASTERIA Warp」の研修から内製・定着までトータル支援
キリンビジネスシステム株式会社(以下、キリンビジネスシステム)は、業務効率化の一環で、グループ社員のIDに業務システムで使用する権限を付与する業務について、「ASTERIA Warp」による開発を計画。アグレックスは、ノーコード開発の研修および開発の伴走、そして内製化を浸透させるための開発標準ルールの策定までトータルで支援した。
- Excelの申請ファイルをやり取り・確認する工程に多くの人手を要する
- RPAではPC画面操作以外の業務を自動化できない
- 業務フローを内製したいが、ノウハウを自己学習で習得するのは困難
- バックグラウンド処理の自動化に適した「ASTERIA Warp」を採用
- ノーコード開発未経験者に寄り添うアグレックス流の伴走支援
- コーディング規約やテンプレートフローの作成で開発ルールを標準化

| 本社 | 東京都中野区中野四丁目10番2号 |
|---|---|
| 設立 | 1988年 |
| 事業内容 | キリングループ各社の業務システムの企画・開発・運用・保守、情報インフラ環境の構築・維持・管理 等 |
| URL | https://www.kirinbs.co.jp/ |
背景
Excelファイルに依存した権限付与申請対応の自動化を目指す
キリンビジネスシステムは、キリングループ各社のITインフラやシステムの開発から運用保守までを一手に担う、グループ唯一のIT機能会社である。現在、キリングループは『人がやらなくてよい仕事をゼロに』というビジョンを掲げ、全社で業務効率化に取り組んでいる。キリンビジネスシステムもこの共通目標のもと、負荷の大きい定型業務のひとつを改革テーマに選出した。
マスタ・連携基盤グループの米村恵理菜氏はこう説明する。「この対象業務は、グループ会社からの申請に基づき、社員IDに業務システムへのログイン権限を付与するというものです」。申請は基本的にExcelファイルをメール添付等で受領するが、人事異動の時期は所属組織の変更も重なり、数千人規模の社員IDが記載されていることもある。受領後は、Excelファイルの申請内容に日付の間違いや記入漏れがないかを確認し、もし不備があれば申請者に差し戻す。そして問題が解消された後は、データ登録画面で社員IDごとに1件ずつ情報を手入力する流れであった。
この手順を効率化するため、同社はRPAを導入したが、十分な解決には至らなかった。「PC画面でマスタデータを1件ずつ更新していく作業は自動化できましたが、メールでデータを受領して内容をチェックしたり、申請者に差し戻したりといった、人手を要する作業は依然として残ったままでした」(米村氏)。
加えて、RPAはソフトウェアロボットの稼働中にPCのリソースを占有してしまうため、他の業務に支障をきたす課題もあった。そこでマスタ・連携基盤グループは、RPAに代わる、より広範な業務プロセスを自動化できるツールの検討を開始した。
選択
ノーコード開発を伴走型で支援するアグレックスをパートナーに選択
マスタ・連携基盤グループが注目した自動化ツールが、同社の経理部で先行導入されていた「ASTERIA Warp」であった。RPAがPC画面上の操作を代行するのに対し、「ASTERIA Warp」はシステムの裏側でデータを連携・受け渡すことを得意とする。さらに、コンポーネントと呼ばれるアイコンを並べるだけでフロー(業務処理)を開発できる、ノーコードツールの代表格でもある。
しかし、同グループ内には「ASTERIA Warp」の開発経験者はゼロ。「私はJavaの開発経験はありますが、ノーコード開発ツールは初めて。試しに触ってみて、アイコンの理解が必要だったり、コーディング開発と流儀が違っていたりと、慣れるまでに時間がかかりそうな印象でした。自己学習は難しいと判断し、社外の力を借りることにしました」(米村氏)。
開発支援を託す複数ベンダーを比較検討した結果、最も高い評価を得たのがアグレックスであった。「顧客自身がツールを使いこなし、自走できる状態になるまで“伴走支援”するという提案が、他社と一線を画していました。また『ASTERIA Warp』について知見が深いことや、研修も伴走も同じ方が担当してくれるというサポート体制に心強さを感じました」(米村氏)。こうして、アグレックスをパートナーとして採用。“システムの利用権限に関する申請対応業務”を効率化するフローを開発するプロジェクトがスタートした。
開発
“一緒につくりながら学ぶ”アグレックス流の内製化支援
「ASTERIA Warp」によるフロー開発は、アグレックスの研修で基礎を習得した米村氏が主体となって進められた。「今回の自動化対象は、従来のRPAでは対象外だった、申請データの受領や内容確認まで広範囲です。そのため、最初に現状の業務手順を可視化して、無駄のない理想的なフロー設計をアグレックスと相談しながら固めていきました」。
そしてアグレックスによる伴走支援は、オフィスでの直接の助言とWebミーティングを組み合わせるハイブリッド型で実施された。アグレックスのアドバイスの的確さについて、米村氏はこう振り返る。「開発途中のレビューでは、かなり細かく手を入れていただき、安心して開発に専念できました。また、受領したExcelデータの不備をチェックする仕組みをどこまで厳格につくり込むかで悩んだ時は、信頼性と構造のシンプルさで折り合いをつける的確な助言をいただき、さすがの知見だと感心しました」。
定着
誰が開発しても保守性を担保できるように、開発ルールを標準化
マスタ・連携基盤グループにとって、今回の業務プロセス開発は、あくまで最初の一歩。今後、より多くの社員がノーコード開発に参加し、第2弾、第3弾と内製していくうえで欠かせないのが、開発ルールの標準化であった。開発者以外が手を入れられないブラックボックス化を防ぐため、アグレックスの雛形をベースに「コーディング規約」が作成された。「例えば、フローの名称は先頭をアルファベット大文字にする、また、配置するコンポーネント(部品)のプロパティを標準化するといった、当社独自の開発ルールを細かく決めて保守性を担保できるようにしました」(米村氏)。
また、今後の内製化浸透を見据え、多くの業務に共通する手順となる「テンプレートフロー」を初回開発時からつくることとした。「マスタ・連携基盤グループでは、申請データの受領、内容チェック、差し戻し、基幹システムへの登録、登録完了の連絡という流れは多くの業務で共通しています。テンプレートフローをベースとすることで開発工程が大幅に短縮できることを実際に体感できました。今後の内製開発ではテンプレートフローを積極的に活用していく予定です」(米村氏)。
効果
誰もが使えるノーコード開発ツールで“真の業務効率化”を目指す
2025年3月に、「ASTERIA Warp」の研修で幕を開けたプロジェクトは約半年後の9月に完了。完成したフローが実践に投入された。
「やはり、RPAでは自動化の実現が困難だった人手のかかる作業を減らせたことは、大きなメリットだと感じます。特に、申請データに問題があった場合、『Excelファイルの何行目にどういう間違いがあるのか』といったメッセージを自動生成して申請者に返送する仕組みができたことにより、作業負荷が大きく軽減されました。これは、特に苦労してアグレックスと意見交換しながら組み込んだ機能です」(米村氏)。
また、「ASTERIA Warp」はPC画面のUIに左右されないバックグラウンド処理であるため、OSやアプリケーションのアップデートでUIが変わる都度、調整する手間も不要となった。
今回のプロジェクトで、キリンビジネスシステムの現場に、自ら業務プロセス改革を進めていく基盤が整ったことになる。最後に米村氏は、今後の構想をこう語る。
「次は、権限付与以外の申請も自動化していきたいですね。また、これまで開発にあまり触れたことがない人にも、私が橋渡し役になって『ASTERIA Warp』によるフロー開発を浸透させていきたいと思います。アグレックスには、今後の定着フェーズでも引き続き力になっていただくことを期待しています」。
お客様の声

キリンビジネスシステム株式会社
基幹システム本部
基幹システム第3統括部
マスタ・連携基盤グループ
米村 恵理菜氏
アグレックスの力をお借りし、初めての「ASTERIA Warp」のフロー開発がゴールを迎えることができました。実際に動かしてみると、「ここを改善したい」という点も見えてきたので、アグレックスと一緒に改良しつつ、第2、第3のフローの内製へとつなげていきたいと思います。
マスタ・連携基盤グループは今、自動化の新たな試みとして、熟練社員の知見を生成AIに学習させる仕組みも研究中です。まだ経験が浅い社員でも、ベテランの知見を活用して生産性を高めていこうというものです。アグレックスには、普段からこうした新しい挑戦への相談にも気軽に乗っていただいており、ITパートナーとしてとても頼れる存在です。
アグレックス担当者から
株式会社アグレックス
デジタルトランスフォーメーション事業本部
CRMソリューション事業部
DXインテグレーション部
部長
中里 絢一
株式会社アグレックス
デジタルトランスフォーメーション事業本部
CRMソリューション事業部
DXインテグレーション部
主任
湯原 瑛里
株式会社アグレックス
デジタルトランスフォーメーション事業本部
CRMソリューション事業部
DXインテグレーション部
主任補
岡 夏帆
キリンビジネスシステム様にとって重要度の高い、業務自動化プロジェクトにご一緒させていただき、誠にありがとうございます。
ご担当の米村様は、ノーコード開発ツールは初めてと伺いましたが、さすがはプログラミングご経験者で、開発の“勘どころ”をつかむのが非常に速い。プロジェクト終盤には、ご自身の意志で次々とテスト工程を進められる姿に、私たちも大変驚かされました。米村様とワンチームになって進められたからこそ、短期間で質の高い自動化フローが完成したのだと思います。
今後も、より広い領域での業務自動化を通じ、キリングループが掲げる「人がやらなくてよい仕事をゼロに」というビジョンの実現を、パートナーとして支えていきたいと考えています。
- ※ASTERIAは、アステリア株式会社の登録商標です。
- ※Microsoft 、Excel は、米国 Microsoft Corporation の米国及びその他の国における登録商標または商標です。
- ※記載されている情報は、取材当時(2025年9月)のものです。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。