
営業と財務会計、2部門のBPRを異なるアプローチで同時進行。業務ルールの標準化とノンコア業務削減で、生産性を向上
JTBグループにおいて訪日旅行(インバウンド)を専門とする株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル(以下、JTBGMT)。飛躍的な成長目標を達成するため、長年継続してきた業務プロセスの見直しを計画した。アグレックスは全社規模のBPR(業務改革)のパートナーとして、業務調査に始まり、「営業部門」と「財務会計チーム」それぞれに最適化したアプローチでBPRを支援。社員が本来のコア業務に集中できる環境を実現した。
- コロナ禍以降のインバウンドの急回復により、現場の業務が逼迫
- 海外エリア別に業務の個別最適化が進行し、異動した際にすぐにフィットできない
- ノンコア業務の増大により、本来の営業業務や会計業務に集中できる時間が不足
- アグレックスの調査で、事業部門ごとの作業工数とボトルネックを可視化
- 「営業部門」「財務会計チーム」の特性の違う2つの部門ごとに異なる改革のアプローチを適用
- 業務手順の標準化とマニュアル作成により、コア業務に専念できる時間を創出

| 本社 | 東京都品川区東品川2-3-14 東京フロントテラス4・5・6・7階 |
|---|---|
| 設立 | 2004年 |
| 事業内容 | 旅行業 |
| URL | https://www.jtbgmt.com/jp/ |
背景
コロナ禍以降のインバウンドの急回復で、現場の人的リソースが逼迫
JTBGMTは、世界各国の旅行会社のニーズに合わせた訪日旅行商品の企画・手配、さらに、日本の自治体等へのソリューション提供や、日系グローバル企業の会議・インセンティブ等の受け入れなど、幅広い訪日旅行サービスを提供している。
コロナ禍によって、訪日客は一時激減したが、2022年10月の水際対策緩和を機に急回復した。しかし同時に、大きな経営課題に直面したと、BPRプロジェクト長を務める武井康浩氏は振り返る。「想定以上のスピードでインバウンドが回復したことで対応業務が急増し、営業現場に大きな負荷がかかっていました」。同社はこの頃、新たな中期経営計画で収益の飛躍的な拡大を目標に掲げていた。この目標達成のために、「社員が営業活動等コア業務に注力し付加価値を生み出すことのできる環境」を整備することが必要と考えた。
そこでJTBGMTはまず、現場の実情を調査し、「誰が、どの業務を、どれだけの工数で行っているのか」を正確に把握することにした。「従来の作業のやり方・体制の延長線上では、成長目標の達成は難しいという肌感覚はありました。しかし、客観的なファクトデータに基づき経営判断を下すために、事前調査は必須だと考えました」(武井氏)。
調査
アグレックスによる事前調査で現場の作業工数とボトルネックを可視化
同社は、事前調査のパートナー候補として複数社を検討。その一社、アグレックスとの会話において、“お客様の業務プロセスに寄り添い、ともにマネジメントしていくBPM(ビジネスプロセスマネジメント)の考え方を大切にしている”という言葉に深く共感した。
業務調査はゴールではなく、その後の業務改革(BPR)こそが本番となる。現場と同じ目線で改革を前進させていくパートナーとしてアグレックスが適任であると判断し、採用に至った。
2023年11月、営業部門を皮切りに、業務量を把握するための「第1回調査」がスタートした。アグレックスは、各作業プロセスの工数調査にあたると同時に、旅行業界特有の業務や商習慣の理解を深めていった。複雑に絡み合う業務フローを紐解くことで、ボトルネックの原因を客観的に可視化していった。
計画
2つの部門の業務特性に応じたBPRのアプローチを計画
業務調査が終わった2024年2月、JTBGMTは可視化された数々の課題を前に、全社をあげたBPRプロジェクトに着手することを決断した。中でも「営業部門」と「財務会計チーム」については、抜本的な業務改革が必要と判断し、アグレックスをパートナーとして本格的なBPRを進める方針を固めた。「2つの部門は仕事の内容が異なるため、別々のアプローチで改革を進める計画を立てました」(武井氏)。
アグレックスとともに策定したプランは次のとおり。まず「営業部門」においては、これまで社員が残業対応等で行ってきた見積りフォームからシステムへの登録等の作業をノンコア業務と位置付け、また部署ごとに曖昧な業務フローやルールを全社統一の標準ルールとしてマニュアル化することを目標に定めた。
一方「財務会計チーム」は、特定業務に縦割り化されていた業務担当の「マルチタスク化」を図ることで、業務の平準化につなげることを目標とした。
こうして、2つの部門にアグレックスのメンバーが入り込み、現場に寄り添うかたちでのBPRが本格的に始動した。
改革(営業部門)
業務手順の共通化と、ノンコア業務の徹底した切り離しで生産性を向上
それまでの営業部門、レジャー事業・法人事業では、部署ごとに異なる手配のルールや各種フォーム等が存在していた。ルールを標準化することは、社内におけるエンゲージメント強化の観点でも必要性が高いと判断。「営業業務マニュアル」の作成による業務の標準化に向けて、業務調査で顕在化した課題に対し、アグレックスとともに以下の3つのテーマでBPRに取り組んだ。
①見積りフォームの統一
現場には対峙するマーケットの違いによりExcelベースの見積りフォームが28種類存在することが判明した。「これほど種類が多かったことに驚きました。社内異動時に、業務に慣れるまで時間がかかる理由のひとつが理解できました」(BPRプロジェクト 秋山美佐枝氏)。
アグレックスは共通要素を整理して、見積りフォームを統合することを提案。そしてBPRプロジェクトメンバーが中心となり部署に対しヒアリングを実施した。この過程では、これまでの業務フローを変えることに対し、少なからず抵抗感もあったという。「特に独自見積りフォームを使用している部署では、統一見積りフォームの導入に時間はかかったものの、現場に寄り添いトライアルを繰り返すことで徐々に使用部署が拡大していきました。個別の部署からの要望に応えられるよう都度改修を行い、各部・各課単位の勉強会を開催したことで、現在は多くの部署で利用してもらっています。導入に慎重な部署に対しては丁寧に説明することで納得してもらえました」(秋山氏)。
②「営業業務マニュアル」の新規作成
見積りフォームだけでなく、営業業務の標準フローにおいても社内に統一されたマニュアルが存在せず、社員の認識にも差があった。そのため、これまでは社内異動のたびに業務フローを確認するために多くの時間を費やしたり、誤認識が発生していた。そこで、全営業個所共通の標準ルールを「営業業務マニュアル」にまとめることで、業務手順の標準化を図った。
③ノンコア業務の切り離し
リソース不足から、営業が代行していた施設への初期問い合わせや事業パートナーとの契約業務を、本来の仕入部門へ再移管した。「アグレックスから『この作業は本来、営業部門の受け持ちではないのでは?』と指摘され、“当たり前”と思い込んでいた矛盾に気づくことができました」(秋山氏)。また、一人あたり月12時間を要していた、社の基幹システム「Tourplan」への見積登録作業も、JTBグループ会社へ業務委託することで、社員の顧客対応に資する時間創出につなげることができた。
そして①〜③の改革の結果、「現場からは『お客様に接する時間が大幅に増えた』との声が上がっています」(武井氏)と、売上拡大に直結する大きな効果が表れはじめている。また秋山氏はこう続ける。「この春に他のエリア担当に異動した社員は、マニュアルを見てすぐに業務にフィットできるようになりました」。
改革(財務会計チーム)
作業手順書の整備でスタッフをマルチスキル化し、業務の標準化を目指す
財務会計チームが直面していた最も大きな課題は、国内の事業パートナー様(宿泊施設・輸送会社・食事/入場箇所等)から届く月間最大1万2,000件にのぼる請求書の対応であった。紙をスキャンして会計システムに登録する、データの場合は特定フォルダへ格納するといった作業を数人の派遣スタッフが担当していた。「作業が停滞して事業パートナー様への支払いが遅延することを防ぐためにも、また社内の適正な収支管理を徹底するためにも、最も改善を要していた業務でした」(財務会計チーム 佐藤善行氏)。
①派遣スタッフの業務をアグレックスに移管し手順マニュアルを作成
アグレックスは、属人化していた作業手順を標準化するため、請求書処理業務をアグレックスの常駐チームへ移管し、実務を行いながら共通ルールを策定することを提案した。アグレックスの飯島悠太はこう振り返る。「これは、単に『業務を代行します』というBPOビジネスではありません。今後、他社に業務委託することになった場合でも、“誰でも確実に業務を回せる”レベルで標準化されたマニュアルを確立すること。これこそがアグレックスが目指したBPMのかたちです」
②請求書種類に関わらず誰もが作業を担当できるマルチスキル化
手順マニュアルの活用で、作業担当者のマルチスキル化を目指した。それまでは、請求元のリレーション(宿、交通機関など)別にメンバーを固定して作業を実施していた。しかし、作業手順に差異があるため、手が空いていても他のカテゴリのメンバーを手伝えないことが大きな課題であった。アグレックスへの業務移管後は、標準化された手順マニュアルを参照することで、カテゴリの壁を越えて誰もが作業に臨める体制が構築された。
③新しい作業者に対する指導・教育負荷の軽減を目指す
マニュアル作成には、新しくスタッフが加わるたびに発生していた、社員による業務レクチャー負荷を解消する目的もあった。「教える人が違うと、異なる解釈で作業が進むことがあるのが悩みの種でした」(財務会計チーム 西村美紀氏)。標準的な手順を明文化したマニュアルで、この課題の解消を図った。
そして①〜③の改革の効果を西村氏はこう語る。「請求書の種類に関わらず誰もが同レベルの作業ができるようになり、繁忙対応するスタッフを全体で助けあえる体制が整いました。また新しいスタッフへの引き継ぎやレクチャーの手間がなくなり、社員はお金の流れをチェックするコア業務に専念できるようになったことで、残業時間も約2割ほど減少しています」。
検証
業務改革を“一過性のイベント”で終わらせないための、検証と改善のサイクル
本プロジェクトの最大の意義は、業務特性の異なる2つの部門に対し、それぞれの課題に応じたアプローチを同時並行で走らせ、全社最適へと導いた点にある。
営業部門では、改革に着手してから約2年が経過した2025年秋、施策の定着度を検証するための「第2回調査」を実施した。その結果、「当初20%だった標準マニュアルや共通フォームの認知・理解度が、70%超まで浸透していることが確認できました。現在、100%の浸透度を目指して動き出しています。今後も、現状分析(As-Is)とあるべき姿(To-Be)の改善サイクルを回し続けていきます」(武井氏)。
一方、財務会計チームでは2026年6月、アグレックスのBPOに委託した請求書対応業務を、グループ内の海外拠点へ一部移管するという、経営戦略の次の一手が動き出した。「さらなるコスト削減を目指してのグループ内製化です。これも、アグレックスに業務の標準化・マニュアル化をしてもらわなければ実現不可能だったでしょう。弊社とアグレックスとの共通の目的が達成された事例だと捉えています」(佐藤氏)。
武井氏は、今後のBPRプロジェクトの展望をこう締めくくる。「改革はまだ道半ばです。今後は、AIやRPAを利用した自動化・省力化も検討しています。今回の収穫は、アグレックスとの取り組みを通じて、社内に『これまでの当たり前を疑い、業務をマネジメントする文化』が根付いたことです。今後も改善サイクルを回し続け、さらなる事業成長・収益拡大を目指します」。
お客様の声

株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル
レジャー事業本部 BPRプロジェクト
プロジェクト長
武井 康浩氏

株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル
レジャー事業本部 BPRプロジェクト
担当マネージャー
秋山 美佐枝氏

株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル
総合企画本部 財務会計チーム
課長
佐藤 善行氏

株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル
総合企画本部 財務会計チーム
会計管理課 業務管理グループ
グループリーダー
西村 美紀氏
アグレックスは、単なる調査役ではなく、当社の「改革チームの一員」として、現場への粘り強い説明や合意形成に並走してくれました。一貫していたのが「ぜひ変えましょう」といった提言ではなく「変えることができますよね」という選択の余地を残したスタンスです。最終判断は我々が行い、「変えよう」と決断した段階で、アグレックスが一気に改革のアプローチを提示してくれるという、パートナーとして信頼感がおける進め方でした。
このアグレックス流のメソッド、そして当社と目的意識を完全に共有してくれたからこそ、この短期間での成果につながったのだと思います。
アグレックス担当者から

株式会社アグレックス
デジタライゼーション事業部
ビジネスリレーションサービス第1部
マネジャー
飯島 悠太

株式会社アグレックス
営業本部
BPM営業第3部
上級マネジャー
相馬 慎哉

株式会社アグレックス
営業本部
BPM営業第3部
主任補
吉村 栄佑
2つの事業部門でBPRプロジェクトを同時進行するにあたり、短期間でのヒアリングや、情報の迅速な分析が大きな挑戦テーマになりました。当社にとって旅行業界のBPRは初めてであり、業界特有の業務や商習慣を理解しながら調査を進めることに苦労もありましたが、着実に成果が出てきていると伺い手応えを感じています。
JTBGMT様の営業部門においては、業務手順の共通化で、人の異動があった際もすぐに新しい業務にフィットできる効果が出ています。また財務会計チームでは、アグレックスのBPOチームによるマニュアル作成で、「業務遂行の安定化につながった」と感謝のお言葉をいただけたことが印象に残っています。
これからも、継続的なビジネス成長へ向けて、お客様を伴走支援していきたいと考えています。
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- ※記載されている情報は、取材当時(2026年5月)のものです。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。