導入事例

令和7年の戸籍振り仮名の法制化に備え、「姓名クリーニングツール」で拗音・促音一括変換の実証実験を実施

京都府宇治市様

令和7年5月施行の「改正戸籍法」で、戸籍の記載事項に振り仮名が追加される。これを受けて全国自治体では、戸籍に記載される予定の氏名の振り仮名を確認してもらうための通知の計画立案、氏・名の振り仮名の届出(以下、届出)に対応する体制構築等が喫緊の課題となっている。
京都府宇治市(以下、宇治市)は、既存の直音のみの振り仮名データを拗音・促音(ャュョッ)対応に変換して通知することを計画。アグレックスの「姓名クリーニングツール」を利用した実証実験で、令和7年の本番対応の準備をより盤石なものとした。

導入したソリューション・サービス
(写真左から)京都工業 竹下氏/アグレックス 五月女/宇治市 西吉氏/宇治市 大西氏/アグレックス 阪口
お客様情報
宇治市役所 京都府宇治市宇治琵琶33番地
市制施行 1951年
URL https://www.city.uji.kyoto.jp/

背景

より正確な情報を通知するため拗音・促音を含んだ振り仮名の作成を計画

人口約18万人の宇治市は、市の中央を流れる宇治川を中心とした豊かな自然と、多くの文化遺産が息づく都市。世界遺産の平等院や宇治上神社は、およそ千年の歴史を今に伝える人気スポットとなっている。

全国の市区町村が令和7年5月の戸籍振り仮名法制化の対応を急ぐ中、宇治市でも独自の準備が進められている。振り仮名データの保有状況は自治体によって異なるが、宇治市は既に戸籍システムや住民基本台帳システム(以下、住基システム)上で、直音のみの振り仮名データを管理していた。

法務省の案内では、令和7年5月26日の改正法施行後に、本籍地の市区町村から戸籍に記載される予定の氏名の振り仮名を郵送で通知し、内容を確認してもらう手順となっている。

もし通知に記載されている振り仮名が誤っている場合は、マイナポータルや役所窓口等を通じて正しい振り仮名の届出をする。そして自治体側が内容を1件ずつ厳格に審査したうえで戸籍に振り仮名を記載するという進め方となる。

宇治市は、現在直音のみで管理されている振り仮名を、拗音・促音(ャュョッ)を正しく反映させてから通知することを計画した。その理由を総務・市民協働部 市民課の大西氏はこう語る。「直音のみを通知した場合、拗音・促音を反映してほしいという届出や、通知に関する市への問い合わせが増えることになります。皆さんに混乱を生まないこと、受け皿となる市の人員体制にも限界があることから、拗音・促音入りの振り仮名を通知したいと考えました」。

しかし、在籍者約16万人の姓名を1件ずつ確認し修正する作業は大きな負荷が予想された。「そこで、デジタルツールを利用し、拗音・促音入りに一括変換できないだろうかと考えました。令和7年5月の本番までに、デジタルツールの有効性を確かめ、今後の計画立案に活用しようという構想です」(大西氏)。

選定

日本人の姓名99%以上を正規化できるアグレックスの「姓名クリーニングツール」

宇治市は、ITの知見を持つ複数の取引先企業に、拗音・促音を含む振り仮名データに一括変換する方法について相談。そして、データエントリーなどBPO業務で長年の取引関係にある京都工業株式会社(以下、京都工業)から、有力な情報が提供された。「京都工業のパートナーであるアグレックスが提供する『姓名クリーニングツール』が目的にかないそうだということで、詳細を聞くことにしました」(総務・市民協働部 市民課 西吉氏)。

このツールは、約7万8千種のカナ姓・約5万1千種のカナ名が登録された姓名辞書と判定ロジックを利用し、拗音・促音変換や振り仮名補完ができる。たとえば『服部』という漢字姓に対して、“ハツトリ”という振り仮名が登録されている場合は、本ツールで処理することで、“ハットリ”の読みが採用され、拗音・促音を含む姓であることが判定される。

アグレックスから説明を受けた印象を西吉氏はこう振り返る。「高い精度での判定が期待できることに加え、データをクラウド上等に預けずに庁内の環境で実行できることも、セキュリティ要件を満たしていました。アグレックスはある省庁のマイナンバー関連の案件でも実績があると説明を受け、信頼性も申し分ないと思いました」。

そこで宇治市は、「姓名クリーニングツール」の精度・実用性を確認するため、令和6年6月からアグレックスおよび京都工業をパートナーとして実証実験を開始することとした。

検証

振り仮名に含まれる拗音・促音を高精度で自動判定

今回の「姓名クリーニングツール」による判定テストは、住基システム上の振り仮名データを使用して実施された。当時、戸籍システム上の振り仮名データは一括出力することができなかったため、すぐにデータ出力が可能な住基システムの方が適しているとの判断によるものだ。

テストの手順は、まず住基システムから振り仮名データをエクスポートし、ローカル環境の「姓名クリーニングツール」で処理。結果をExcelの画面で確認するという流れ。

同サービスの判定結果は、該当する姓・名に“拗音・促音変換”ステータスが付与され(下図参照)、Excelでソートすることで容易に件数が集計できる。

姓名クリーニングツール データ変換イメージ ※実際のデータではありません。

集計の結果、拗音・促音を含む姓名の割合は全体の5〜6%程度という結果が得られた。

「拗音・促音を含む割合がつかめたことで、通知を出した後の届出の件数や、受付作業・戸籍記載等の規模感が予測でき、予算計画が立てやすくなりました」(大西氏)。

なお、今回のテストでは住基システムの振り仮名データは実際にはクリーニングしていない。令和7年5月に向けた本番は、住基システムではなく、戸籍システム上の振り仮名をクリーニングしたものを“仮の振り仮名”として通知する予定である。宇治市では、拗音・促音を含む人の比率は今回のテストと同程度になると見込んでいる。

効果

令和7年の戸籍振り仮名法制化に対応する準備が確実に前進

約3ヶ月の実証実験の成果を大西氏はこう語る。「拗音・促音を判定する精度の高さは期待どおりでした。デジタルツールを利用して、直音の振り仮名データを拗音・促音入りに一括変換できることを実証できました。より正確な“仮の振り仮名”を通知するための環境を整備できる見通しがついたことに満足しています」。

なお、通知した振り仮名に対して届出がない場合、自治体は令和8年5月26日以降に通知した振り仮名を戸籍に記載する。いったん記載すると、後で氏名の振り仮名を変更するには家庭裁判所の手続きが必要になる場合もあるため、負担を減らすという観点からも、拗音・促音入りの振り仮名を通知するメリットは大きいと言えるだろう。

今回のデジタルを活用した実証実験の成果は、全国の自治体とも共有していきたいと西吉氏は語る。「自治体はそれぞれの状況にあわせて、戸籍振り仮名の法制化に向けた準備を進めていると思います。当市の今回の取り組みについて、すでに幾つかの自治体から問い合わせをいただいており、知見を共有しながら円滑に法制化対応を進めていきたいと考えています」。

最後に、令和7年5月の法施行後の取り組みについて大西氏はこう語る。「振り仮名通知を皮切りに、届出の受付、個別の審査、そして戸籍記載まで、確実・安全に遂行する必要があります。アグレックスには『姓名クリーニングツール』による振り仮名への一括変換を技術面で支えていただくとともに、将来的には市民サービス向上につながる新たなソリューション提案にも期待しています」。

お客様の声

アグレックスとは初めてのプロジェクトでしたが、官公庁のシステム案件をはじめ、自治体のデータクリーニングや郵便物発送のBPO業務などの実績があると聞き、安心しておつきあいできる会社だと感じました。市区町村の悩み・課題をよく理解されており、気持ちよく会話ができました。

全国の自治体が戸籍振り仮名に対応することで、行政手続きにおけるデータベースの検索性向上や、正確な本人確認など、デジタル行政の進展で、住民サービスのさらなる向上が期待されます。アグレックスおよび京都工業には今後も、自治体の業務で多くの割合を占めている、各種届け出の審査・処理でのAI活用といったDXの領域でも新しい発想のご提案をいただければと思います。

アグレックス担当者から

宇治市様に「姓名クリーニングツール」の判定精度の高さにご満足いただけたことを担当者としてうれしく思います。一方、現段階では、戸籍を持つ外国人姓名の方の多くは自動判定の対象外となるため、今後の辞書拡張等で対応を検討していきたいと考えています。

自治体様によって、住民に通知する仮の振り仮名を拗音・促音に対応させておくかどうかは、考えも異なるかと思います。実際に修正するかどうかに関わらず、まずはどの程度の要員体制や予算確保が必要かを把握する目的で「姓名クリーニングツール」をご利用いただければと考えています。

最近は、自治体様だけでなく、住民のお問い合わせ先となるコールセンター事業者様、修正申請を受け付けるBPO事業者様からも多くのお問い合わせをいただいています。どうぞお気軽にアグレックスにお問い合わせください。

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  • 記載されている情報は、取材当時(2024年12月)のものです。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。