導入事例

社内お問い合わせ用チャットボットの内製化を「開発マニュアル」作成で支援

社員自ら問題を発見・解決できる、IT利活用環境の構築を目指す
東日本旅客鉄道株式会社 JR東日本研究開発センター フロンティアサービス研究所様

JR東日本の研究開発組織の一つである「フロンティアサービス研究所」は、テレワーク環境における働きがい向上と生産性向上を目的とした、社内問い合わせ用チャットボットの内製化を目指している。同研究所初となるチャットボット内製化を支援するため、アグレックスはプログラミング未経験者向けのローコードチャットボット開発マニュアルを作成。JR東日本グループの新しい働き方・暮らしに寄り添うサービス実現に向け、一人ひとりが自らITを利活用して問題発見・解決を行う環境の構築をサポートした。

お客様情報
本社 東京都渋谷区代々木二丁目2番2号
設立 1987年
事業内容 旅客鉄道事業 等
URL https://www.jreast.co.jp/company/

構想

業務知識を集約したチャットボット内製化で、働きがいと生産性の向上の取り組みを開始

JR東日本グループを取り巻く環境の変化に迅速・的確に対処するために、新技術・サービスの研究開発に取り組むJR東日本研究開発センター。その一組織の「フロンティアサービス研究所」では、“あなたの感性を刺激する”をスローガンに、ICTを活用した一人ひとりのニーズに応じたサービス実現に向け研究開発を行っている。
今回のチャットボット内製化の契機となったのは、2020年のコロナ禍による働き方の変化。「私が所属する情報デザイングループでもテレワークを実施するようになりました。これまでの対面とは異なるコミュニケーションにより、生産性やモチベーションの維持・向上が課題になっていました」(同研究所 情報デザイングループ 横山元紀氏)。
そこで、テレワークにおける理想の働き方実現に向け、ユーザー視点に立ってサービスやプロダクトの本質的な課題・ニーズを発見・解決するデザイン思考に基づきディスカッションを重ね、一つの目標に定めたのが、業務知識を集約したチャットボットの開発。個々の研究員の業務知識を一元化し、問いかけに寄り添い回答を返す、いわば“バーチャル上司”のような役割を目指す。「相手の様子が見えにくいテレワークでは、質問も遠慮しがちです。チャットボットが質問に即答することで、テレワークの生産性向上と、より楽しく・快適な環境づくりを通じ、働きがい向上に貢献できると考えました」(横山氏)。
同研究所は、チャットボット開発を社外ベンダーへの委託ではなく、内製する道を選択した。その理由は開発コスト抑制だけではなく、研究員一人ひとりが自らITを利活用して問題発見・解決する、言うなれば“DXの担い手になれる”という自覚を醸成すること。「目の前の問題に対して、自分たちでもITを使って解決できると気づいてもらい、最終的にはサービス改善・新しい価値創造へ貢献したい思いがありました」(横山氏)。

選択

プログラミング未経験者向けのローコードチャットボット開発マニュアルの作成をアグレックスに依頼

同研究所は、チャットボット開発ツールとして、マイクロソフトが提供する「Power Virtual Agents」を選定。プログラミング不要で開発できる点、同研究所のMicrosoft 365環境では追加コスト不要で利用できる点が決め手となった。
研究員には、駅社員・乗務員出身やプログラミング未経験者もいることから、ITリテラシーにばらつきがある。よって、個々の研究員が自らチャットボットを開発するために、プログラミング未経験者を対象とした、開発環境のベースとなるチャットボット開発マニュアルが必要となった。
そして同研究所は、2021年中頃、日本マイクロソフトに「Power Virtual Agents」導入支援を相談。「そこで紹介いただいたのがマイクロソフト認定ゴールドパートナーであるアグレックスでした。Power Platformの導入支援の実績が多く、ローコード開発の幅広いノウハウに期待しました」(横山氏)。
こうして同研究所はアグレックスに、プログラミング未経験者を対象とした「Power Virtual Agents」の開発マニュアルの作成を依頼。「システム導入の案件ではなく、マニュアル作成という特殊な依頼。加えてPower Virtual Agentsを対象としたものは今回が初めてということでしたが、Power Platform導入支援として快く引き受けていただきました」(横山氏)。

作成

実務を反映した演習問題で、誰でも開発者になれるマニュアルを目指す

マニュアル作成は、2022年の年明けからスタートした。アグレックスの南拓海はこう振り返る。「オリジナルのマニュアルを作成するにあたり、プログラミング未経験者でも途中でつまずかないようにすることを一番の目標としました」。まず、過去のPower Platform導入支援経験を踏まえ、初心者が理解しにくい点を洗い出し、マニュアル全体の構成を検討。そして全編を通して画面キャプチャを活用し、見たとおりに操作を進めればチャットボットを開発できるコンテンツを目指した。将来的に他部門への横展開を見据えて、各部門の実務に合わせてカスタマイズできるよう、Wordファイルによる作成を採用した。
掲載内容は、“チャットボットとは何か”“チャットボット導入で期待される効果”などの基礎知識に始まり、質問・回答が1対1で紐づくシンプルなチャットボットのつくり方、さらにフロー分岐を伴うような高度な設計、公開の手順など、段階を踏んで実践的な知識・スキルを習得できる流れとなっている。
本マニュアルの大きな特長は、各章の最後に収録した演習問題。設問はいずれも、業務マニュアルに記載の業務フローに基づき作成された。したがって、演習問題作成にあたっては、同研究所が業務フローおよび「Power Virtual Agent」の実装サンプルを提供し、アグレックスが演習問題を作成していく協力体制で進められた。
こうして、約3週間の作成期間を経て、Wordによる約250ページの開発マニュアル「Power Virtual Agents 利用手引き」が完成した。

効果

「Power Virtual Agents 利用手引き」を研究所内に展開し、チャットボット内製化トライアルがスタート

2022年2月からは、完成したマニュアルによる自己学習がスタートし、スキルを学んだ研究員が順次チャットボットの開発に参画している。2022年7月時点で、研究員がよく行う業務問合せに対応する、1対1のFAQを30程度実装したシンプルなチャットボットがテスト運用されている。
このチャットボットは、同研究所のコミュニケーション基盤であるTeams上からダイレクトに利用することもできる。今後、複雑な質問への対応、効率的な運用などの課題解決を検討している。
マニュアル作成の効果について、横山氏はこう語る。「チャットボット内製化はまだ道半ばですが、プログラミング未経験でも自分たちの手でITを利活用して、目の前の問題を解決できることに気づけたのが最大の収穫です」。
JR東日本グループ内では、同研究所以外でも「Power Virtual Agents」をはじめとしたPower Platform等のIT利活用を積極的に行っている。「今回作成したマニュアルを他部門へ水平展開することも検討中です。グループ社員一人ひとりが自らITを利活用して問題発見・解決する気運を盛り上げ、DXの担い手を増やすことに貢献できればと思います」(横山氏)。

お客様の声

「Power Virtual Agents 利用手引き」を使用した研究員からは「演習問題が実践的でとても良かった」「画面操作しながら学べるのが良い」といった感想がありました。また、他部門から「自分の部署でもそのようなマニュアルづくりを検討していた」との声もありました。当研究所の研究員のITリテラシーを踏まえて、実践的なマニュアルを作成いただき感謝しています。
情報デザイングループの研究テーマの一つに、 駅・鉄道ご利用のお客様の“状況・ニーズ・感性(気分)”に応じたサービス開発があります。アグレックスには、研究開発を通じたさらなる価値向上のため、データの収集・利活用をはじめとしたDXに関わるITソリューションのご提案を期待しています。

アグレックス担当者から

初めてチャットボットを作成する方にとって “最初の1歩”となるマニュアルが完成し、担当としてうれしく思います。コンテンツの編集・作成にあたっては、研究者としての鋭い視点で多くのご意見をいただき、大変勉強になりました。
「Power Virtual Agents」を含むPower Platformの製品群は、Office製品との親和性が高いローコード開発環境です。さまざまなお客様のDX推進の足がかりとなるよう、今後も導入支援に取り組んでいきます。

  • Microsoft、Microsoft 365、Power Platform、Teamsは、米国 Microsoft Corporation の米国及びその他の国における登録商標または商標です。
  • 記載されている情報は、取材当時(2022年7月)のものです。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。