コラム

1974年7月 連想入力方式による漢字情報処理サービスを開始

「KANPS」ってなに?

例)「新宿」の入力

漢字の入力と言えば、「ローマ字変換」を思い浮かべるのが一般的かと思いますが、アグレックスでは「KANPS」という全く別の入力方式が使われています。
「KANPS」では、カナで「ルキヤト」とタイプするだけで「新宿」の文字が入力できます。連想入力方式を採用しており、「ルキヤト」は、「ルーキー(新)+ヤド(宿)」という連想から作られたコードです。

なんだか難しそう・・・

「KANPS」を使いこなすには、連想コードを覚えること、カナのタッチタイピングができること、この2つが必須となります。これらを同時に学習し、頭と体(手)の両方から「KANPS」を覚えていきます。
「連想入力」という名の通り、コードはさまざまな連想から覚えられるよう工夫されていて、使用頻度の高い漢字は記憶し、低い漢字は、読み・部首・総画数から検索して入力します。

「KANPS」のここがすごい!

スピードUP!
変換入力と比較してタッチ数が少なく、候補選択の必要もないので入力スピードが上がります。
変換候補が多い名前や、変換が難しい名前も「KANPS」ならタッチ数は同じです。北海道や沖縄にある難しい地名も意識せずに入力できます。

スピードUP!

入力精度UP!
変換候補の選択が必要ないので、「変換ミス」を防ぐことができます。
例えば、茨城-茨木のように同じ読みでも漢字が違う地名もありますが、「KANPS」では変換によるミスは起こりません。
紛らわしい漢字を形から区別するという連想パターンもあります。

入力精度UP!

「KANPS」で何でも打てる!?

「KANPS」で打てるのは漢字だけではありません。住所や氏名には漢字以外の文字も含まれるため、「KANPS」でひらがなやカタカナ、英数字、記号も、漢字同様にカナ2文字で入力することができます。濁点や句読点等も入力可能です。

KANPSの例

コードには、入力しやすさを考えたさまざまな工夫が凝らされています。例えば、株式会社は「トレレトトネネト」、佐藤は「レキキレ」というようにセットで使われることの多い漢字はくり返しで入力できるようになっています。また、沢[シリ]のリにシフトをかけると澤になるといったように後ろにシフトをかけることで旧字、略字、俗字が入力できるという工夫もあります。

「KANPS」誕生秘話

「KANPS」の開発者である元社長の山口氏に、当時の様子をインタビューしました。

「KANPS」の誕生

1974年、私は入力センターでアルバイトをしていました。当時はまだ記憶媒体に「紙テープ」を使っていて、入力を間違えたらその部分をハサミで切って修正をしているような時代でした。
世の中はコンピュータ時代が幕開けし、多くの情報が高速処理されるようになりましたが、漢字による情報の機械処理だけは、どの会社もなかなか手をつけられずにいました。
そこで、当社は、漢字入力の研究をしているK社に注目し、業務提携することを決めたのです。
当時の役員から「ちょっとK社に行って勉強してこないか?」とアルバイトの私に声がかけられ、K社の社員と共に、漢字にコードを振り付けることになりました。

決め手はスピード&リズム

コードの決め方は、まずは百科事典や電話帳に頻出する漢字をピックアップし、使用頻度の多い順に入力しやすいキーを充てていくというもの。
頻出漢字には、動かしやすい指を使うこと、左右の手で交互にリズミカルに入力できることを基準にキーを充てていきました。左手の小指を2回続けて使うようでは早く打てませんからね。
キーボードとメトロノームを使って、試行錯誤しながら考えました。
まだ連想入力の効果もよくわからない中での作業で、なんだかバカバカしく思いながらも、延々と作業を続けようやく完成しました。

記念すべき初仕事は?

「KANPS」が完成し、漢字情報処理をいち早く手がけたいという思いはあったのですが、当時は漢字入力の仕事がありませんでした。
そんなときに、国土地理協会の損保コードで、コードブックとコードマスターを作れば売れるのではないかと考えた人がいました。後に出てくる「ADDRESS」です。
漢字情報処理の練習も兼ねて、「ADDRESS」の開発には、「KANPS」が使われました。
「KANPS」の初仕事は、お客様の情報処理ではなく、自社開発製品の入力だったのです。

「KANPS」本格始動!

完成後しばらくして損保会社から漢字入力業務の受注が決まりました。
これをきっかけに本格的な漢字データ入力業務がスタートしました。
当時は半信半疑だった「KANPS」の効果がやっと認められたのです。自分でも「これはイケる!」という確信を持てたのもこのころでした。
あれから約50年、「KANPS」は、今なお入力の現場で使用され、その力を発揮しています。