導入事例

ダイレクト生命保険コールセンターをアグレックスと共創、“対面を超える感動体験”で顧客を拡大

はなさく生命保険株式会社様

2018年設立のはなさく生命保険株式会社(以下、はなさく生命保険)は、2020年に自社初となるダイレクト生命保険事業に進出した。顧客への良質なサービスを提供するコールセンター立ち上げに向け、共創パートナーとして選ばれたのがアグレックス。業務フロー設計、帳票の設計・印刷、アフターフォローの施策などを初期段階からはなさく生命保険とともにつくりあげ、事業成長に大きく貢献している。

導入したソリューション・サービス
お客様情報
本社 東京都港区六本木三丁目二番一号 六本木グランドタワー18階
設立 2018年
事業内容 生命保険業
URL https://www.life8739.co.jp/

背景

目指したのは対面の営業を超えるサービス品質のコールセンター

はなさく生命保険は2019年、保険代理店(乗合代理店)向けの商品供給から営業をスタートした。そして2020年、新たな領域としてダイレクト生命保険(電話やWebによる直販)を開始した。当時のマーケットについて、ダイレクトマーケット推進部の大寄昭生氏はこう説明する。「誰もがネットでモノを購入する時代になっても、生命保険は対面型の契約数が97%と圧倒的でした。ダイレクトをためらう理由として、『自分にあう保険プランが分からない』、『何年も契約が継続するので誰かの助言がほしい』といった不安があったと思います」。

ダイレクト生保業界は、対面型に比べて安価な保険商品を販売することから、どうしても業務効率やコスト削減に重点が置かれやすい。しかし効率性を高めるほど、顧客に寄り添うサポートが実現できないジレンマに陥っていた。

大寄氏は、このままではダイレクト生保のマーケットはこれ以上広がらないと考えた。「そこで構想したのが、コールセンターを通じた『対面を超える感動体験』の提供です。CMや広告を見てお問い合わせいただく方、資料請求いただいた方からのヒアリングなど、お客様との最初の接点となるコールセンターで、きちんと対応して最適な商品を提案する。お客様の不安を解消すれば、“ダイレクトの限界”を超えてマーケットは一気に広がるはず。狭い市場のトップを目指すのではなく、ダイレクト生保のマーケットを大きく成長させ、その中のリーダー的ポジションを目指したいと考えました」。

対面を超える良質なサービスの鍵となるのがコールセンターの“質”。「しかし、当社にはダイレクト生保の経験者はほとんどいませんでした。どうすれば良質なコールセンターを構築できるのか、契約からアフターフォローまでトータルのビジネスモデルをつくれるのか、ゼロからの出発でした」(大寄氏)。

選択

事業の共創パートナーとしてアグレックスを選定

同社は2019年から、ダイレクト生保の中軸となるコールセンターを立ち上げるためパートナー企業の選定に着手したが、条件にみあう会社は見つからなかった。
「我々が考えていたのは、お客様目線で丁寧な応対サービスを提供できる、効率重視とは逆の、いわば“誰も見たことのないコールセンター”でした。いくつかの大手コールセンター事業者に相談しましたが、どこも豊富な経験をアピールし“すべて当社にお任せください”というスタンス。我々が目指す理想を反映できる余地は少なく、同業他社のコールセンターとの差別化ができそうにないと感じました」(大寄氏)。

そんな時、新たにパートナー候補となったのがアグレックスであった。既にはなさく生命の保険代理店向け事業でBPOを請け負い、多摩センターにおける資料発送業務や、申込書の受付業務などで、強い信頼関係が構築されていた。大寄氏はアグレックスを評価した点をこう語る。「BPOだけではなく、SIerとして事業領域が非常に広い。我々の目標は、コールセンターを軸として、潜在層の開拓、契約のお手伝い、アフターサポート、保険金お支払いまでワンストップで提供する事業モデル。アグレックスなら一社でこれらをシームレスに連携できるのではないかと考えました」。

大寄氏は続けて、パートナーとして正式採用を決めた一番の理由をこう説明する。「コールセンター専業ではないアグレックスなら、当時の業界スタンダードであった“受付業務の効率化・コスト削減”にとらわれ過ぎない柔軟な発想ができるのではないかと。新しいコールセンターモデルを一緒につくる共創パートナーに最もふさわしいと考えました」。

そしてプロジェクトは、大寄氏の次のような言葉から始まった。「“はなさく生命に気をつかう必要はまったくありません”とアグレックスのメンバーにお話ししました。発注者の顔色をうかがうのではなく、常にお客様視点で考えることを最優先してほしかったからです。アグレックスはこの希望に応えて、成果を過度にアピールして我々の機嫌をとるようなこともありませんし、時には“お客様視点で考えると今の方向は疑問です”と反対意見も出してくれる。現在に至るまで、我々の意図を十分に理解して順応してくれています」。

共創1

東池袋コールセンターにおける業務プロセスをゼロから構築

1ヶ所目のコールセンターは、2020年7月に東池袋での開設が決定した。立地として、北海道や沖縄ではなく都内を選んだ理由を大寄氏はこう説明する。「距離が遠いと現場との意思疎通が難しく、結果報告を受けるだけになってしまう懸念がありました。当社の本社がある東京で、密にコミュニケーションをとりながらつくっていくことが最良と判断しました」。

コールセンターの準備は、はなさく生命保険から2名、アグレックスから4名という少数精鋭の体制で進められた。「商品開発やプロモーションを除いて、ほぼすべての領域が、アグレックスとの共創です。コールセンターの構築をはじめ、帳票の設計・印刷、資料発送や受付など業務フローの設計、そしてCTIやCRMの導入まで。あらゆることを初期段階からアグレックスと一緒に考えて進めていきました」(大寄氏)。

電話応対を担当する人材は、36名を採用。「当社では、“オペレーター”ではなく“アドバイザー”と呼んでいます。単なる機能的な応対ではなく、お客様にとって最良のプランを一緒に考えたり、ちょっとしたお悩みごとの相談に乗ったりできる人材であってほしい。一人ひとりにその自覚を持ってもらいたいという思いがあります」(大寄氏)。

そして、目指す品質の電話応対で求められるスキルについては、「初期段階では、アグレックスが保有しているコールセンターとしての作法に、はなさく生命保険からの商品知識や業務知識、セールスノウハウをプラス。入口の段階で、お客様が最も納得できるプランをおすすめできる体制を整え、運用しながらブラッシュアップしていくこととしました」(大寄氏)。

共創2

資料送付後のフォローコールの強化で成約率が最大35%まで向上

共創関係が始まって5年、ダイレクト生保事業のコールセンターは、全国4ヶ所・計200人規模にまで成長した。「最初の頃は、我々がサービス向上施策の原案をつくっていましたが、経験を積んだ方が現場に増えた今は、ほとんどノータッチです。『この課題を解決するにはどうする?』と皆でアイディアを出しあい、アグレックスとアドバイザーが一体となった“アグレックスチーム”によって自主的に取り組みが進んでいます」(大寄氏)。

大きな効果をあげた取り組みに、フォローコールがある。これは、資料到着時に顧客へ電話をかけ、ニーズをヒアリングし、プラン選択や申込の手順などをサポートするというもの。業界では一般的な手法だが、はなさく生命保険ではフォロー内容の質の高さと、最初の顧客接点で“資料が届いたら電話をしてほしい”とお客様が希望したくなる会話の流れをつくることに重きを置いている。「通常の会話の流れでは、お客様に資料送付後の電話フォローを提案しても、ほとんどの方は希望されません。それが、アドバイザーの会話を工夫することで、多くの方にフォローコールをご希望いただけるようになりました。これはアグレックスチームが試行錯誤しながらつくりあげたノウハウのひとつです」(大寄氏)。

このフォローコールにより、成約率は15%から25%へ上昇、アドバイザーによっては30〜35%という驚異的な数字を叩き出すという。「お客様一人あたりに時間をかけるのは一見非効率にも思えますが、良質なサービスを提供することで成約率向上につながることが実証されました」(大寄氏)。

共創3

顧客とアドバイザーのOne to Oneコミュニケーションを強化

そして、はなさく生命保険が2024年から注力しているのが、契約後の長期的なサポート強化だ。「保険をご契約いただいてからお支払いが発生するまで、何年もサポートがないとお客様が不安を感じてしまいます。そこで、ご契約後も長期的に、丁寧なサービスにより良質な体験を提供することを目指しました」(大寄氏)。

この取り組みは「LTV(ライフタイムバリュー)活動」と命名され、そのひとつに、対面型での訪問に相当する「なじみ化コール」がある。「お客様へ定期的に電話し、何気ない会話で絆を深めていくことが目的です」(大寄氏)。その結果、保険の長期的な継続や、家族構成が変化した際の保険商品追加につながることもあるという。「電話をかける時間帯、話し方のちょっとしたニュアンスなどを個々のアドバイザーがトライし、効果があったものをアグレックスチーム全員で共有することで効果を高めています」(大寄氏)。

もうひとつの施策例が「指名入電」の勧奨。これは、契約者から“◯◯さんをお願いします”と指名があったアドバイザーを評価する制度だ。「本来コールセンターは誰が電話に出ても均一のサービスを提供できることが強みですが、お客様目線で考えると自分の担当者が欲しいはず。そこで、One to Oneのつながりを強めるために始めた取り組みです」(大寄氏)。その後、電話だけでなくLINEを加えて入口を複線化し、契約者からより気軽にコンタクトできる仕組みも設けられた。

こうして現場が工夫を重ねることで、保険契約の継続率は確実に上昇しているという。「アグレックスチームがトライ&エラーした成果が数字としてあらわれ、継続率は従来の85%から90%にまで上昇しています。さらにお客様の方から、追加契約や家族や友人への紹介契約をいただけるケースも出ていますが、これはダイレクト生保では画期的な出来事です」(大寄氏)。

■スマートフォン・PC画面を共有して迷いがちな操作を遠隔サポート

はなさく生命保険は2024年に、スマートフォン・PCの画面を共有しながらプラン設計や申込をサポートする仕組みを開発。アグレックスは自主的にセンター内に応対チームを立ち上げ、「どういう会話の流れでアドバイスすれば分かりやすいか」「どう画面を指し示せば迷わず進めるか」といった工夫を重ねてサービス改善に取り組んでいる。

文化

“一人ひとりがはなさく生命”という自覚でコールセンターに活気が生まれる

2020年から継続するアグレックスとの共創を振り返って、大寄氏はこう語る。「ダイレクト生保の経験がゼロだった我々が短期間でここまで事業拡大できたのは、アグレックスとのパートナーシップがあってこそ。心より感謝しています」。

共創の成果は目に見える数字だけでなく、コールセンターの現場に根付く「文化」こそが大切だと大寄氏は強調する。「市場リサーチでいろいろなコールセンターを見ましたが、この現場には独特な明るい空気感、働きやすさがあると感じます。見学に来た方は揃って、アドバイザーが生き生きと働いていることに驚かれます。それを可能にしているのが、5年間の共創で培ってきた文化・風土です」。

その根底にあるものは、すべてのアドバイザーの高いモチベーションだと大寄氏は続ける。「共創を始めた時から、アグレックスに当社のビジョンや考え方を伝え、それを現場の教育やマネジメントに徹底的に反映していただいてきました。アドバイザーが『自分自身がはなさく生命』という自覚を持ち、会社・業界の将来目標に向けて何をすべきかを考えてトライしてくれている。こうしたマインドは、マニュアル化された手法だけでは実現が難しいものであり、共創で得た一番の財産と言えます」。

最後に大寄氏はこう締め括る。
「対面型を超えるために、まだまだやるべきことはあると思います。その一方で、ダイレクトにしかできない、未知の可能性も感じています。これからもアグレックスとの共創関係で、新しいダイレクト生保のかたちを一緒に考えていきたいと思います」。

お客様の声

このコールセンターは、何か大がかりなITの仕組みで業務がうまく回るようになったわけではありません。すべては、アグレックスチームが、当社社員のような意識を持ち自主的に動いてくれていること、つまり「人」が成功の最大の要因だと思います。

親会社の日本生命は当社に、目先の利益の数字よりも、グループの5年後・10年後を考えた新しいビジネスを期待しています。「なじみ化コール」など、売上にすぐ影響するものではありませんが、数年後には確実に成果となってあらわれるでしょう。アグレックスと日々新しい施策や効果的な手法のアイディアを考えつつ、誰も見たことがないようなコールセンターを育てていきたいと思います。

アグレックス担当者から

新規事業の重要施策を共創するという貴重な経験をさせていただき、はなさく生命保険様には感謝しかありません。このコールセンターが、活気と体力のある空間に育っていること、そこからダイレクト事業のプロフィットを生み出せていることをうれしく思います。

真っ白なキャンバスに描くことから始めたLTV活動ですが、大寄様の「ネーミングから考え、かたちにしていこう」という最初の言葉を鮮明に覚えています。お客様が保険と付きあう長い時間に、より鮮やかな彩りを加えられるよう、そしてその信頼関係からたくさんの新たな紹介が生まれるように、これからもLTV活動に取り組んでいきたいと思います。

  • 記載されている情報は、取材当時(2025年2月)のものです。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。