導入事例

金融機関水準のセキュリティ要件をクリアし、法人の経営課題に応える事業プラットフォームをクラウド化

SMBCコンサルティング株式会社様

法人顧客のさまざまな経営課題解決を主事業とする、三井住友銀行グループ(以下、SMBCグループ)のSMBCコンサルティング株式会社(以下、SMBCコンサルティング)。顧客との接点となる事業プラットフォームの保守性を高めるため、スクラッチ開発されたWebサイトをクラウド上で再構築することを計画した。アグレックスは、SMBCグループで定められた厳格なセキュリティ要件をクリアしつつ、安全・確実にクラウド化を実現した。

課題
  • スクラッチ開発したWebシステムが経年によって保守性が低下
  • クラウド移行には、SMBCグループの厳格なセキュリティ要件を満たすことが必須
解決
  • グループ内でクラウド移行実績のあるアグレックスをパートナーに選定
  • 要件定義の前に、3ヶ月の徹底した“業務理解”フェーズを実施
  • 現場ユーザー参加型の開発で、実務での使いやすさをブラッシュアップ
導入したソリューション・サービス
お客様情報
本社 東京都中央区八重洲1-3-4 三井住友銀行呉服橋ビル
設立 2001年
事業内容 会員事業、教育事業、コンサルティング事業
URL https://www.smbc-consulting.co.jp/

背景

法人顧客との接点となる事業プラットフォームのクラウド化を計画

SMBCコンサルティングは、約1万社の会員組織「SMBC経営懇話会」の運営、ビジネスセミナーを軸とした「教育サービス」、企業価値向上を支援する「コンサルティング」の三本柱で事業を展開している。システム企画部の菱沼裕子氏はこう説明する。「企業のお客様は時代の大きな変化の中で、経営、人材戦略、事業承継といったさまざまなお悩みをお持ちです。当社は、事業規模を問わずお客様の課題解決を支援する“駆け込み寺”的な価値を提供しています」。

すべての事業で、顧客企業との接点となるのが、コーポレートサイトを兼ねるWebサイト。これが、同社の事業プラットフォームとしての重要な役割を担っている。

同サイトはオンプレミスの基盤上にスクラッチ開発されたもので、約9年が経過し保守性の低下が課題となっていた。「機能の追加や変更のたびに改修を重ねたことで、構造が複雑化しメンテナンスが困難になっていました。また、画面遷移が分かりにくくユーザビリティの低さも課題だと感じていました」(システム企画部 小川悟氏)。

そこでシステム企画部は、オンプレミス環境のサーバー設備が保守切れを迎えるタイミングで、クラウド化を構想。スクラッチ開発されたWebサイトの構造を抜本的に見直し、クラウド上で再構築する計画を立ち上げた。

この時、課題となったのが、セキュリティ面での品質確保であった。執行役員の西村茂樹氏はこう説明する。「当社はSMBCグループの一員、つまり金融機関の子会社です。そのため、セキュリティ要件が非常に厳しく、クラウドでお客様情報を扱うには、セキュリティが完全に担保されることが必須条件となります。しかし、当社は基幹業務システムをクラウド移行した経験・ノウハウがなかったため、プロジェクトの前段階で足踏みをしている状況にありました」。

選択

SMBCグループでのクラウド移行実績を持つアグレックスをパートナーに指名

そんな時、システム企画部は突破口となる情報に出会った。「たまたま、グループの株式会社プラリタウン(以下、プラリタウン)の方と話をする機会があり、基幹業務システムのクラウド移行に成功したことを聞きました。そこで、改めて詳細を聞かせてもらうことにしました」(西村氏)。

そして後日、プラリタウンから、クラウド移行プロジェクトのパートナーとなったアグレックスの紹介を受けた。

「当社の事業プラットフォームをクラウド化したいという協力依頼に快諾をいただけました。プラリタウンの案件でリーダーを務めた方もメンバーに加わっていただけるということで、これ以上心強いことはないと感じました」(西村氏)。

構成はプラリタウンの事例をベースとして、クラウド基盤はアマゾン ウェブ サービス(AWS)、Webサイトの再構築は「Salesforce Experience Cloud」を利用することとした。

最初の課題となるSMBCグループのセキュリティ審査への対応について、小川氏はこう振り返る。「申請にあたり、クラウド環境の安全性を裏付ける膨大な書類の準備が必要でした。今回、プラリタウンと同じシステム構成であることから、多くの情報を参考にすることができたこと、経験を持つアグレックスから助言をもらえたことが大いに役立ちました」。

こうして、グループの審査部門との折衝は円滑に進み、事業プラットフォームをクラウド化する計画は無事承認。プロジェクトが正式に始動する運びとなった。

準備

3ヶ月間の「業務理解」フェーズを設け、特殊な業務内容を学習

今回クラウドで再構築する事業プラットフォームは、約240の機能、約100画面で構成される複雑なWebサイト。3つの主要事業を遂行するためバックグラウンドで管理機能が複雑に絡み合っており、これを「Salesforce Experience Cloud」の機能を使って再構築することは大規模なプロジェクトとなることが想定された。

アグレックスのチームリーダー細井裕道はその印象をこう語る。「我々はECサイト構築の経験はあっても、会員事業やセミナーを運営するための事業プラットフォームは未知の領域でした。移行を確実に成功させるため、まずはお客様の業務をイチから理解する必要があると考えました」。

そこでアグレックスは、要件定義に入る前に3ヶ月間の“業務理解”フェーズを設ける進め方を提案。これを受けてSMBCコンサルティングは、システム企画部、事務担当スタッフがアグレックスと膝詰めで質疑応答する場を用意した。

この時に得られた知見をアグレックスの木村淳史はこう振り返る。「一例として、セミナーの特殊な機能があります。これは、従業員が個別にセミナー参加を申し込まなくても、企業オーナーや人事部の方が、まとめて最大数十人規模で一括申し込みできるというもの。一般的なセミナーのサイトでは珍しい機能で、これに伴いどのような事務作業が発生するかを教えていただきました」。

この3ヶ月の業務理解を経てから要件定義へ進むことで、より実務にフィットする仕様が目標として固められていった。

開発

全員参加型のプロジェクトで、使いやすい管理画面へブラッシュアップ

本プロジェクトのもう一つの成功要因は、社内の協力体制にあった。業務を最も熟知するスタッフ約30名が開発フェーズから参加し、管理画面への意見を活発にフィードバックすることが円滑なプロジェクト進行に結びついた。

「呉服橋の本社では、年間約2,000本の来場型セミナーの開催や、『SMBC経営懇話会』会員への通知送付などあらゆる事務作業で、Webサイトの管理画面を利用しています。事業の生命線とも言えるもので、現場の意見を最大限に反映したいと考えました」(菱沼氏)。

設計工程の最初の2〜3ヶ月で、アグレックスがほぼ実物に近い管理画面を作成し、事務担当スタッフに共有。要望をヒアリングして修正を加えていくという、アジャイル型で開発が進められた。

「基本的に『Salesforce Experience Cloud』はSaaSですからカスタマイズには限界があります。その縛りの中でも、アグレックスは管理項目の追加や並び順の変更など、できる限り要望に応えてくれました。事務担当スタッフに対して、実現できること/できないことを丁寧に説明してくれて納得を得ながらプロジェクトを円滑に進めてくれました」(西村氏)。

そして、プロジェクトの後半の約1年は、セキュリティ面の検証と、データの流れを確認するためのテスト期間にあてられた。「Webサイトで発生したセミナー申し込み情報や会員情報は、バックグラウンドで勘定系システムに連携されます。そのため、対象が会社の全システムに及ぶ大がかりなテストとなりました」(西村氏)。

効果

業務効率化と顧客のユーザビリティ向上が同時に実現

約2年のプロジェクトは2024年10月にカットオーバーを迎え、クラウド上の新たな事業プラットフォームが稼働を開始した。西村氏は、アグレックスの仕事ぶりを高く評価する。「メンバー一人ひとりのスキルが高く、単なる小手先の技術ではないプロジェクトの堅実な進め方に、とても安心感がありました」。

また小川氏はこう続ける。「当社側の内製開発スケジュールもかなり厳しく管理されました(笑)。大変でしたが、それさえ守れば必ず成功に導いてくれるだろうという確信を持って進めることができました」。

移行後の、事務担当スタッフの業務改善ポイントについて、菱沼氏はこう語る。「一番のメリットは、お客様がマイページで変更した情報が基幹システムに自動連携されるようになったことです。以前は、変更内容を目視して反映するかどうかを手動で選択していましたが、今回、入力ルールに反する場合は再入力を促す仕組みを設けてもらい、人手を介さずに取り込めるようになりました」。

同時に、画面デザインやサイトの導線も大幅に改善され、訪問者にとって、よりユーザビリティの高い事業プラットフォームに生まれ変わった。

「SMBC経営懇話会」Webサイト(https://www.smbc-consulting.co.jp/

構想

顧客体験の向上につながる機能改良を継続

本稼働後も、SMBCコンサルティングの要望に応えて、アグレックスによる機能追加が続けられている。2025年7月には、セミナー会場の受付を省力化する機能が実装された。「これまで、来場型のセミナーでは、マイページで受講証をプリントしていただき、それを会場受付で確認していました。新たに加えたのは、受講証をQRコードで表示する機能です。これにより、会場入口のQRコードリーダーにスマホ画面をかざすだけで受付できるようになりました」(菱沼氏)。

さらに今後は、SMBCグループの“Salesforceファースト”の方針に沿って、Salesforce製品のさらなる活用も構想中。「現在、オンプレで動かしている勘定系システムをクラウドに移行する計画です。それにあわせて、勘定系と連携していた業務系システムの顧客管理や営業支援の機能の一部を切り出して、Salesforceに移すことも検討しています」(西村氏)。

西村氏は最後に、AIを組み合わせた活用への期待を語る。「SalesforceにもAI機能『Einstein』があり、顧客体験(CX)向上を目指していくにはAI抜きには考えられないようになっていくと思います。アグレックスには、我々の考えを超えるような、事業成長につながるシナリオを提案いただけるととてもうれしいですね」。

お客様の声

アグレックスは、我々が過去に経験したことがないほど、しっかりとプロジェクトを進めてくれました。満足度を点数で表せば、ほぼ満点だと思っています。

9年前にオンプレミスでWebサイトを構築した際、事務担当スタッフに画面を見せられたのがリリース直前の2〜3ヶ月前になってからで、多くの要望に応えられませんでした。それに比べて今回、本当に早い段階からアグレックスに画面イメージを見せていただき、事務担当スタッフにとって大きな安心感があったと思います。

情報連携している外部サイトとのインタフェース部分についても、各サイトを受け持つ他ベンダーと積極的にコミュニケーションいただき、まとめ役として牽引してくれたことにも感謝しています。これからの運用フェーズも引き続きご支援を期待しています。

アグレックス担当者から

今回、アグレックスの札幌拠点が遠隔でプロジェクト支援にあたりましたが、お客様から『最初は距離に不安もあったが、業務を深く理解し、プロジェクト管理をしっかり進めてくれて満足している』とお言葉をいただきうれしく思います。

要件定義の前に“業務理解”のために3ヶ月の工程を確保したことが、本プロジェクトの成功につながったと思います。この成功体験をきっかけに、『要件整理』と命名したフェーズを設けることが、アグレックスの標準プロセスとして定着しています。

Salesforce製品群は、マーケティングやカスタマーサポート、データ分析など豊富な選択肢があります。今後はこれらに生成AIを組み合わせることで、お客様により良い価値を提供していきたいと考えています。

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  • 記載されている情報は、取材当時(2025年8月)のものです。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。

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