金融業界におけるバックオフィス業務のDXにはBPO活用がおすすめ(事例あり)
金融業界は新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに急速なビジネスモデルの変革が求められています。各金融機関にてDXが推進されていますが、特に受付事務やコンタクトセンターなどの業務を含む「バックオフィス領域」のDX化が急務です。
その背景には、顧客接点(スマホアプリなど)におけるDXは進んでいるものの、社内の業務において未だアナログ作業の部分が多いという現実があります。本記事では、金融業界における業務効率化のためのDX推進について解説していきます。
※本記事の「バックオフィス」は、受付事務等を含めた広義の意味でのバックオフィスを指します。
DXとは
DXはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、経済産業省は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
出典:「デジタルガバナンス・コード2.0」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf)(2024年7月8日利用)
例えば、クラウド型のビジネスツールは世の中に多く存在していますが、DXはクラウド型ツールを導入するだけではありません。業務をはじめ、「組織や企業文化・風土の変革をする」という点がポイントです。
金融業界のバックオフィスのDXは遅れている!?
金融業界自体のDXは進んでおり、顧客接点でのDXが顕著です。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、対面接触を避けるなど人々の生活モデルが変容したことを受け、急速にDXが加速しました。
例えばとある銀行の住宅ローン審査申込アプリは、申込から結果の表示までスマホで完結できるようになっています。しかしながら、銀行内部、特にバックオフィス業務では従業員が申込内容を目視で確認したり、電話で内容の確認をしたりと、処理業務においてはDXが進んでいない金融機関が少なくありません。要するに、顧客接点の入り口と出口のDXは進んでいるものの、処理工程のDXが遅れているケースが多々あるのです。
バックオフィス業務のDXの実態
バックオフィス業務の効率化を図るためには、DXを推し進める必要があります。しかし、一朝一夕には進められない理由があります。
バックオフィスDXを阻む要因
バックオフィスのDXを阻む主な要因は以下の3つです。
・DXを推進する余力がない
一般的にDXは、定常業務と並行しながら進める必要がありますが、日々の忙しい業務の中で、さらにDXを推し進めるのは従業員にも負荷がかかります。例えば、2024年から始まった新NISAなどの金融商品の対応で、金融機関で行う業務が増えています。定常業務に加え新しい業務が増えることで人手が足りない状況になっており、DXを進めること自体が難しいという現実があります。
・最先端の技術を使いこなせる人材確保が困難
DX推進には、相応のITリテラシーが必要です。例えば生成AIやプログラミング言語について知っているだけでは不十分であり、「使いこなせる」スキルが必要です。しかしながら、自社社員をそのレベルまで育成するのは時間もかかるうえに難しく、中途採用などで外部から調達するとしても、高度IT人材を探すのは難航を極めます。
・投資してもそれに見合うリターンがあるのか不明瞭
今後待ち受ける制度改正やマイナンバーの利用、行政機関のデジタル化などにより、金融機関の手続きは大きく変わることが予想されるなか、足許の業務改善に対して投資しづらい状況にあります。また、これまで人手で行っていた業務をデジタル化するためには、業務プロセスの見直しを行い、新たなシステムの導入や現行システムへの機能追加などを行う必要がありますが、実装には費用が発生するため企業にとっては負担となり、投資に見合う売上・利益が得られるのかがわかりにくいのが実情です。特にバックオフィス領域は売上に直結しないことが多いため、DXへの投資に躊躇する傾向がみられます。
BPOを活用してバックオフィス業務にDXを
BPOとは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略で、業務プロセスの一部を一括して専門業者に外部委託することです。ある特定の業務を切り出して外注するのではなく、企画・設計から運用まで一貫して外注することを指します。
金融機関におけるバックオフィスの効率化には、DX推進が不可欠です。DXを推進するには最先端のスキルや知見を持つ人材確保が必要ですが、実際には難しいことを先ほど述べました。そこで、DXを効率よく推し進めるためにおすすめなのがBPOの活用です。
バックオフィスDXを成功させるBPOサービスの選定
従来のBPOは、お客様が行ってきた人手作業をそのまま代行する労働集約型サービスが多くを占めていましたが、昨今では、デジタル技術を適用したBPOサービスのニーズが高まっています。
単に業務を委託し遂行するのではなく、バックオフィス業務のDXを目的とする場合は、専門知識を持ちデジタル技術を活用したBPOサービスを提供するBPO企業を選定することが肝要です。
BPOを利用しコア業務に集中
バックオフィス業務でBPOを活用することによるメリットは、当該業務のDXが進むことだけではありません。
業務をコア業務とノンコア業務に分け、BPOを利用してノンコア業務を外部委託することによって、社員はコア業務に集中することが可能になります。これにより、サービス開発などの付加価値向上に資する活動にリソースを割くことができるようになり、競争優位性の向上につながります。なお、顧客がコア業務と考えていた業務の中にもノンコア業務が含まれていることもあるため、綿密な業務分析が求められます。
金融業界におけるバックオフィス効率化の事例
先ほど課題や懸念点を挙げましたが、実際にバックオフィス効率化に成功した事例もあります。ここで一部紹介していきます。
どちらの事例も、顧客管理において重要な役割をもちながらも、お客様からすると売上にはつながらないノンコア業務にあたります。自社用の業務プロセスを一から構築するのではなく、業務プロセスを標準化して提供しているBPOサービスを活用することで、投資を抑えて、DXに成功しています。
ケース1:生命保険の契約保全業務
従来、生命保険契約における登録情報変更の保全事務プロセスは、手作業と目視によって行われてきました。
この事例では、業務処理の入り口となる紙の申請書の受付処理はAI-OCRを使用して人的作業を最少化し、後続の不備確認・解消処理はクラウド型ITプラットフォーム上で判断工程も含めて自動化することで、フルデジタルな業務処理を実現しました。さらに、これらの処理のシステムログを分析し、業務の継続的な改善にもつなげています。
ケース2:口座振替業務
口座振替業務に関して、スキャナとAI-OCRの組み合わせにより口座振替依頼書の情報をすべてデータ化し、不備チェックもこれまで人の目で確認していた作業の自動判定を可能にしました。
これにより、人的作業によるミスを低減し高品質な業務運営が可能になるとともに、複雑になりがちな口座振替事務スキームをスリム化し、業務効率化と低コスト化を実現しました。
この2つの事例は、アグレックスが開発した「受付・登録業務プラットフォーム」上で構築し、サービスとして展開しているものです。事務業務の大多数は、「何らかの情報を受領し、精査し、不備があれば解消し、正しい情報を入力・登録し、そして次工程につなぐ」という流れです。それを自動化する基盤がこのプラットフォームです。今後は、この基盤を利用し、相続事務、公的照会、SMS送金などのサービス化を進める予定です。
アグレックスが提案するDX推進とは
経済産業省では、「DX成功パターン」と題して、DXを成功させるフレームワークを紹介しています。これによると、DX推進は直接的にDXに進むものではなく、企業が具体的なアクションを設計できるように、DXを以下の3つの異なる段階に分解しています。
1.アナログ・物理データのデジタルデータ化である「デジタイゼーション」
2.個別の業務・製造プロセスのデジタル化である「デジタライゼーション」
3.ビジネスモデルの変革である「デジタルトランスフォーメーション」
出典:「DXレポート2 中間取りまとめ(概要)」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dgs5/pdf/005_s03_00.pdf)(2024年7月8日利用)
DXは必ずしも1から順番に段階を踏んでいくものではありませんが、この順番で進めた方が進行しやすいです。
実はDXが進まない企業の多くは、1の「デジタイゼーション」の段階で躓いていることがほとんどです。例えば、紙ベースで行ってきた業務のDXを進める場合、紙書類をデジタルデータ化する作業から始める必要がありますが、内製で行うにはシステム導入や人材確保が必要となるため、躊躇するケースが少なくありません。
自社内でDXを推進するのが難しい場合は、専門知識を有するBPO企業の活用を検討しましょう。アグレックスをはじめとする、DX推進を得意とするBPOの企業に相談するのも一案です。
アグレックスは、アナログからデジタルへの変換に特化したオペレーションセンター「Digitalization Center」を保有しており、1の「デジタイゼーション」にお困りのお客様の課題を解決可能です。また、アグレックスのBPOサービスを活用することで、ノンコア業務を切り出し、最新デジタル技術により業務プロセスのデジタル化を実現するとともに、コア業務に集中できる環境をつくることができます。
さらに、アグレックスではプロセスマイニングを活用し、業務を可視化しKPI実現に向けた継続的な業務改善を支援します。プロセスマイニングとは、企業において従業員が行うさまざまな業務活動のログを取得し分析したり、業務プロセスを可視化したりすることで現状を把握し、それを業務改善に活用する手法のことを指します。
金融業界のバックオフィスの効率化には、DXの推進が不可欠
金融業界では、DX自体は進められているものの、道半ばという企業もみられます。多様化するニーズに対応しながら高い競争力を維持していくためには、デジタル技術を活用した業務プロセスの効率化やコスト削減への取り組みが不可欠です。アグレックスのBPOを活用することで、業務プロセスのデジタル化とプロセスマイニングを用いた継続的な業務改善によって、効果的にDXを進めることができ、バックオフィスの効率化を実現できます。少しでも興味のある方は、まずはお気軽にご相談ください。
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