コラム
2024年8月8日

プロセスマイニングとは? メリット・課題と導入事例について解説(事例あり)

プロセスマイニング
DX
データ利活用

前回の記事(金融業界におけるバックオフィス業務のDXにはBPO活用がおすすめ(事例あり))では、アグレックスが提案するBPOを用いたバックオフィス業務効率化のためのDX推進について紹介しました。その中で触れたのが、業務を可視化しKPI実現に向けた継続的な業務改善を行うことができる「プロセスマイニング」という手法です。業務プロセスのデジタル化により、蓄積した業務活動ログを活用して可視化や改善を行うプロセスマイニングの導入をスムーズに進めることができます。

本記事では「プロセスマイニング」を用いて、企業内に蓄積された業務活動ログデータを活用し、継続的な業務改善に導く方法を取り上げます。

プロセスマイニングとは?

プロセスマイニングとは、企業において社員等が行うさまざまな業務活動のログを取得し分析したり、業務プロセスを可視化したりすることで現状を把握し、それを業務改善に活用する手法のことです。従業員の業務の現状を把握することで、対象業務における手戻りやボトルネックなどの課題が明らかになり、業務改善すべき箇所を明確にできます。

「業務改善すべきだが、どこに原因があるのかわからない…」。そのような場合に、プロセスマイニングは役立ちます。

プロセスマイニングが必要な理由

売上を増やしつつ、業務改善を行ってコストを削減していきたいというのが会社としての方向性でしょう。しかし、すべての従業員の業務を正確に可視化するには膨大な時間がかかるため、思うように業務改善が進んで来なかったというのが実情ではないでしょうか。

恐らくこれまでの業務改善は担当者へのヒアリングが中心で、業務の可視化をしても抜け漏れが発生していたことなどが考えられます。本人からの聞き取りだけでは、業務の可視化には限界があります。プロセスマイニングであれば、蓄積された業務のログを解析して可視化していくため、業務調査に工数がかからず、抜け漏れも発生しません。

プロセスマイニングでできる3つのこと

プロセスマイニングを取り入れると、以下の3つのことができるようになります。それぞれ解説していきます。

現状の把握

プロセスマイニングでは、「誰が」「何を」「どれくらい」やっているのかを可視化できます。よって現在の業務をすべて把握することができるのです。成果物や個人の売上だけでは把握できない、従業員各々の業務量・工数をデータとして取得できるようになります。

業務課題の分析

プロセスマイニングでは、業務の手順やリードタイムを詳細に可視化できます。従来の仕事の進め方が整理されておらず、その結果工数が余計にかかってしまっていたという場合もあります。案件の進捗や個人の稼働状況などを調査・改善し生産性を上げるためにも、プロセスマイニングは役立ちます。

業務改革の効果測定

ヒアリングベースで業務改善を行っている場合、改善を行っただけで終わってしまうことが多々あります。プロセスマイニングを使うと、従来可視化し難かった事務プロセスを数字で把握できるようになり、施策実行前と実行後で、業務の中でどのプロセスにどのような効果があったのかを数字ベースで把握できるようになります。KPIに沿った改善ができるだけでなく、継続的な分析・改善に向けて次の施策を検討する際にも役立つため、まさに一石二鳥と言えます。

プロセスマイニングを利用するメリットと課題

プロセスマイニング導入の検討を進める際には、メリットや課題を知っておく必要があります。ここでは、プロセスマイニングを利用するメリットと、導入にあたっての障壁について説明していきます。

プロセスマイニングを利用するメリット

まずはプロセスマイニングを利用するメリットから見ていきます。

・非効率な作業を減らし、必要な業務に集中できる
プロセスマイニングを利用すれば、従業員の作業を可視化できます。そのため、非効率な作業の抽出が可能です。無駄な作業を極力減らし、必要な業務に人員を投入するためにも、プロセスマイニングは効果的です。

・改善のサイクルを回し、継続的に業務改善できる
プロセスマイニングでは、継続的な改善サイクルを回すことができます。具体的には下図のようにサイクルを回すことで、ビジネスプロセスの根本的課題を特定できます。

「やったら終わり」になりがちな業務改善を、プロセスマイニングを用いてシステムログを軸に数字ベースで改善サイクルを回すことで、経営が掲げるKPIの実現に向けた継続的な分析・改善が可能となります。

・社内規定違反・法令違反を見つけられる
プロセスマイニングを導入すると、企業ルールに違反した業務や、法令遵守ができていない業務を早期に検出することが可能です。聞き取りや人力での調査では出てこない、コンプライアンス違反に抵触する作業を見つけることができるほか、活動プロセスのモニタリングによりルール違反の抑止となり、内部統制の強化にもつながります。

プロセスマイニングを活用するうえでの課題

一方で、プロセスマイニングを利用するためには障壁もあります。

・対象プロセスがデータ化されていないと活用できない
プロセスマイニングは、対象となる業務プロセスのデータを用いるため、まずは業務プロセスのデジタル化が必要になります。デジタル化にはシステム導入が必要となり、時間的・人的コストもかかるため、プロセスマイニングを取り入れるにはある程度の準備期間が必要となります。(この障壁の解消法については、以下のバナーのリンク先で触れています)

よろしければこちらもご覧ください。

なお、アグレックスでは、システム利用していない業務でも、業務プロセスをデータ化してプロセスマイニングを活用するノウハウを持っています。詳細はお問い合わせください。

・活用にはノウハウが必要
プロセスマイニングを導入しても使いこなせていないケースも見られます。プロセスマイニングを効果的に活用するには、ツールの使い方だけでなく、専門的な知識も必要です。専門とする企業の支援なしでは、プロセスマイニングを進めることは簡単ではありません。

金融業界のバックオフィスでのプロセスマイニング活用事例

プロセスマイニングの事例を見てみましょう。ここでは、金融機関の「口座開設業務」でのプロセスマイニング活用例を紹介します。今回の事例では、「データ取込」「可視化」「分析」「シミュレーション」「モニタリング」というプロセスマイニングの段階ごとに見ていきます。

データ取込

まずはデータの取込です。システムから出力される業務実績ログをプロセスマイニングツールに取り込みます。この際、業務実績ログに時間データやリソースデータなど、さまざまな情報を付加することで、業務プロセスとKPIを紐づけて分析することが可能になります。

可視化

続いては日々の管理業務の可視化です。プロセスマイニングツールの画面上には「口座開設」や「書類のスキャニング」などの各工程の項目が並び、例えばどの工程で何件「待機」なのか、もしくは「処理中」なのかをリアルタイムで把握できます。

現状の生産性では完了させなければならない期日に間に合わない場合、不足する人員数を自動的に算出します。別画面にて、人員別の稼働状況を一覧で把握でき、長時間稼働していない人がいる場合は、業務調整の連絡をし、配置換えなどの措置を行うことが可能です。

分析

実際の業務処理にはバリエーションがあり、複雑な経路を経て進んでいくため、一般的にプロセスが一直線に進むことはほぼありません。そこで、まずは一直線に進むプロセスを標準的なプロセスとして定義します。そして現状の業務処理を標準的プロセスと比較します。例えば現状のプロセスと標準的プロセスとの適合率も出せますし、標準プロセスの場合にかかる日数に対し、現状はどのくらい日数がかかっているのかもわかります。さらに、なぜ余分に時間が延びているのかについて、ボトルネックとなっている原因まで把握可能です。担当者別の工数も分析できるため、これらの情報をもとに、教育や配置換えなどの措置を実施できます。

シミュレーション

分析が終わったら、次はシミュレーションを行っていきます。ここでは例として、紙での口座開設依頼ではなく、WEBでの口座開設のシミュレーションを紹介します。シミュレーションの実行には、以下のような設定を行います。

1.対象のプロセスに流入する件数と時間
2.各工程を実行するリソースの割り当て
3.各工程の生産性
4.チームごとに割り当てたリソースの人数、コスト、稼働時間
5.各工程間の分岐条件(例えば一次審査という工程なら、二次審査には90%、上長等に指示を仰ぐなどの審査エスカレーションには10%遷移するなどの割合)

そのうえでシミュレーションを実行すると、平均処理時間や平均コストが算出されます。また、設定した各リソースの稼働率なども確認できます。このシミュレーションを行うことで、現状の状態(AsIs)の平均処理時間やコストと、それらのあるべき状態(ToBe)を比較できます。

<AsIs>

<ToBe>

モニタリング

上記のシミュレーションは効果の試算ですが、改善実行後は実績データをもとにKPIの状況や推移をモニタリングすることが可能です。また、上長に相談を仰ぐなどのエスカレーション率の推移をグラフで見ることもでき、一定数を超過した場合にはアラートを上げて対応を促すこともできるようになります。

アグレックスのプロセスマイニングサービス

アグレックスでは、「プロセスマイニングサービス」を提供しています。

アグレックスの業務プロセス改善の実績と専門的な知識をもとに、プロセスマイニングを活用し継続的な業務改善・高度化を支援します。プロセスマイニングの導入・活用支援はもちろん、業務課題・原因の分析サービスや保守・運用の内製化に向けた支援、さらにBPOサービスと組み合わせた継続的な業務改善サービスなど、お客様のご要望に応じた多面的なサービスのご提供が可能です。

プロセスマイニングを活用した業務改善を行いたい方へ

昨今、DXの推進が求められていますが、全てのプロセスを完全に自動化できるまでの状況にはなっておらず、全てのプロセスはシステムと人的作業で行われているのが実情です。それ故に、継続的な分析と改善の努力が必要であり、その効果的なツールがプロセスマイニングです。

プロセスマイニングは、バックオフィスの効率化を推進するうえで有効ですが、活用するためには、対象業務プロセスのデータが必要です。アグレックスのサービスを活用すれば、業務プロセスのデジタル化から、プロセスマイニングを使ったKPIに沿った継続的な業務分析・改善が可能です。さらに、プロセスマイニングにより蓄積データを活用していくことでDXを加速させることもできるのです。

プロセスマイニングについてもっと知りたい、疑問点・不明点があるという方は、お気軽にアグレックスにご相談ください。

  • 記載している情報は、記事公開時点のものです。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。

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