コラム
2021年8月2日

社内導入におけるプロセスイノベーションとマイニングの効果検証【第4回(最終回)】

第4回(最終回):プロセスマイニングの効果

BPM

デジタルトランスフォーメーション事業本部
ビジネスイノベーション事業部
BPMソリューション部
部長 荒谷 剛

【プロフィール】
 入社以来基幹系システムを中心に設計、開発、PMに従事
 その後脱Notes intra-mart移行案件の提案や、プロジェクトの責任者を担当、
 現在はintra-mart開発事業を統括

【保有資格】
 PMP(Project Manager Professional)
 Signavio Process Manager 認定
 Signavio Process Intelligence 認定

コラム概要

アグレックスは、働き方改革を積極的に推進し、業務の効率化・自動化を行っています。既存のIT資産を「使い続ける」と共に、 クラウドやAI、IoT、RPAなどの新技術・サービスを「組み合わせて使う」ことで、 変化やニーズに対応できる先進技術への移⾏を行っています。
本コラムでは当社の社内業務で、プロセスイノベーションとマイニングを実践し、その実際の効果について全4回でお届けします。

アジェンダ

【2021年8月2日配信】
第4回(最終回):プロセスマイニングの効果
【関連コラムはこちらからご覧ください】

  • アグレックスとネオアクシスは2021年4月に合併しました。

第4回(最終回):プロセスマイニングの効果

IM-BPM(以下、BPM)を利用した業務が本番稼働して1か月余り、第3回では、BPMの機能と、BPMから得られるBAM(Business Activity Monitoring)により、ボトルネックやリードタイムをリアルタイムに確認する手法をご紹介しました。

最終回である第4回では、Signavio PI(以下SPI)を利用したより詳細な業務プロセス分析手法である、プロセスマイニングについてご紹介します。前回までのおさらいですが、SPIでプロセスマイニングを実施するためには、以下3つの情報が必要となります。

  • いつ(When)
  • 何のプロセス(What)
  • 何をした(How)
  •  

BPMでこれらのデータが自動的に蓄積されますので、簡単なクエリでログを出力し、SPIに取り込むことが可能です。今回は手動で取得およびSPIへ取り込みを行いましたが、自動化し差分のみSPIに反映する処理を作成すれば、リアルタイムに近い形で、プロセスマイニングを行うことが可能です。SPIにはデータを取得するためのAPI連携機能も用意されています。

データを取り込むと、SPI上のさまざまな分析ツールをウィジェットとして利用することができます。ここでは、どのような分析ができるか、また、そこで得られるインサイトについてをご紹介します。

1.Process Discovery(プロセス処理件数)

一定期間内にそのプロセスの中でどのようなアクティビティを経由して、どのくらいの件数が処理されていったかを確認することができます。一般的に処理を完了させるために複数の経路があると業務は複雑になります。複雑化の原因は、業務プロセスが標準化されていないことや属人化しているプロセスが多いことが考えられます。

今回の例ではほとんどのケースにおいて、案件入力→見積申請→見積押印申請→見積書出力→受注・失注入力→請書出力→終了というルートを通っていることがわかります。BPMが業務統制を行い、システムを利用して業務を行っているため、例外ケースが発生しづらいことが分ります。

■図1:Process Discovery

2.Process Conformance(プロセス適合)

この機能ではBPMN2.0で記述した標準の業務フローと、実際の業務アクティビティをプロットすることで、標準として定義した業務フローと、実際の業務運用との適合率を確認することができます。これにより、標準フローから逸脱した処理が行われていないか、想定外の処理が発生していないか、といったことが確認できます。
機能の特長として、システム実装前にSignavioPM(以下(SPM)で構想および作成したToBeモデルと実際の業務アクティビティをプロットすることができます。構想時に策定したToBeモデル通りに業務が実施されているかを確認することができます。

今回の例では、Process Discoveryでの分析と同様、BPM業務統制を行っているため、標準プロセスからの逸脱ケースはありませんでした。しかし、2番目に多いケースのルートを確認してみると、見積申請後に否認や取り止めにより、プロセスを終了させたケースが多いということがわかりました。これは気になる事象であるため、詳細を分析してみることにしました。その結果、いくつかのケースにおいて起案内容の不備で、内容を修正するためプロセスを中止し、新たにプロセスを開始しているということがわかりました。
標準の業務フローでは例外処理のルートをあまり設けない、いわゆるハッピーパスを中心に定義を行いましたが、それにより非効率業務も発生していることがわかり、今後の改善ポイントのひとつかもしれません。

■図2:Process Conformance(プロセス適合)

3.Process Discovery(サイクルタイム)

これまでは、処理件数(ケース数)に着目してきましたが、ここでは、処理時間(サイクルタイム)の視点でプロセスマイニングをした結果についてご説明します。Process Discoveryではプロセス間の処理時間を表示することが可能です。これによりボトルネックとなっている処理を可視化することができます。今回は以下2つのプロセス間でボトルネックが発生していました。

・案件入力から見積申請
新システムの操作に不慣れで時間を要していることと、単純に最初の処理で入力項目が多いためではないかと仮説を立てました。定期的にモニタリングを行い、改善が見られないようであれば対策を講じる予定です。
・見積押印申請から見積書出力
見積押印申請内容の確認を3名の管理部員で行っているため、時間を要していると仮説を立てました。BPM外のシステムの処理結果とBPMの登録内容を目検で確認していることも時間がかかる原因のひとつと考えられます。この処理をBPMシステムに取り込むことやデータの連携などの改善が必要です。
■図3:Process Discovery(サイクルタイム)

4.Throughput(スループット)

この機能では、各業務アクティビティの処理量(スループット)を確認することが可能です。また、業務フロー上で処理件数を視覚的に確認することができます。繰り返しになりますが、これらはシミュレーションや想定ではなく実際の業務の結果です。

■図4:Throughput(スループット)

終わりに

ここまでSPIの機能を使ってプロセスマイニングを実施してきました。システム実装前にToBeモデルを作成した時点では気づきませんでしたが、実際にシステムを稼働させると新たな課題が発生しています。これもBPMやSPIによるプロセスマイニングによりタイムリーに問題を可視化できた結果です。
シミュレーション(仮説)により、改善効果があるポイントを特定、システム実装、そしてBPMやプロセスマイニングにより仮説が正しかったかの検証を行います。仮説とは違う結果となった場合は、直ちに改善を行うことが可能です。

システムは一度開発して終わりではなく、常にビジネスの変化に対応して、システムも変化していかなければなりません。そうでなければ業務効率を上げることはできません。
このサイクルを素早く、タイムリーに行うことができるのが、アグレックスが提唱するデジタルサイクルです。

※BPMデジタルサイクルの詳細はこちらをご覧ください

■図5:アグレックスが提唱するBPMデジタルサイクル

今回はBPMで業務を可視化することを優先したため、スモールスタートとなりましたが、今後の取り組みとして、今回わかった新たな課題に対応する改善と、さまざまな事情でローンチできていない、基幹システムへのRPAによる連携を実現させ、さらなる業務改善を行っていきたいと考えています。今後のアグレックスの取り組みにご期待ください。

おわり

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